3,500万円の住宅ローンを35年で借りる。毎月の返済額の差はわずか1万円程度に見える。でも35年後に気づくんです——総返済額が300万円以上違っていたことを。
日本銀行は2026年2月時点で政策金利を2.5%まで引き上げました。ゼロ金利だった2021年からわずか数年で、日本の金利環境は根本から変わりました。地銀協会長もBloombergのインタビューで「金利上昇で預金者行動に変化が生じている」と認めています。
変動金利で借りた人は今、毎月じわじわ増える返済額に顔をしかめています。一方、数年前に固定金利で借りた人は「あの時決断してよかった」と胸をなでおろしている。どちらが正しかったのか?そして今から借りる人、あるいは借り換えを考えている人は何を選ぶべきなのか。
この記事では、感情論や「専門家は〜と言っています」という曖昧な情報ではなく、具体的な数字と明確な判断基準だけでお答えします。
まず現実を直視しましょう。日銀の政策金利は2026年2月時点で2.5%です。これが住宅ローン市場にどう波及しているのか、順を追って説明します。
変動金利は短期プライムレートに連動し、日銀の政策金利が上がるたびに上昇します。ゼロ金利時代(2021年以前)にネット銀行で年0.4〜0.5%台の変動で借りた人は、現在の適用金利が当時の5〜6倍になっている可能性があります。
一方、フラット35(全期間固定)は長期金利(10年国債利回り)に連動します。日本の10年国債利回りは2026年初頭に約1.5〜1.7%台で推移しており、フラット35の実行金利は年3.4〜3.8%程度が現実的な水準です。
ここで重要な疑問が生じます。変動の方が今でも低いなら、変動でいいのでは?
答えは「今の金利差だけを見ていると危険」です。問題は今後の金利がどこまで上がるかではなく、あなたの返済計画がどれだけ金利上昇に耐えられるかにあります。
地銀協会長がBloombergで警告した通り、「金利上昇で預金者行動に変化」が起きています。金利が上がれば預金は増えますが、既存の変動ローン借り手の毎月返済額も増加します。この二面性を理解しておくことが必須です。
抽象論はもういいですよね。数字で見ましょう。借入額3,500万円、返済期間35年という日本の標準的なローン設定で計算します。
シナリオA:変動金利(現在2.9%、今後3年ごとに0.3%ずつ上昇と仮定)
現在の変動金利(主要ネット銀行平均)を2.9%、その後段階的に上昇すると仮定した場合の試算です。
- 当初3年の月返済額:約13万1千円
- 金利が3.5%になった時点の月返済額:約14万4千円
- 金利が4.2%になった時点の月返済額:約15万9千円
- 35年間の総返済額(試算):約5,780万円
シナリオB:全期間固定3.6%(フラット35想定)
- 月返済額(35年間変わらず):約14万7千円
- 35年間の総返済額:約6,174万円
つまり、金利がほとんど動かなければ変動が圧倒的に有利。でも政策金利が現在の2.5%からさらに1%以上上昇した局面では、固定の方が得になります。
ここで考えてほしいのは「どちらが得か」ではなく、「損をした時に生活が破綻しないか」という視点です。
変動で毎月13万円払えているご家庭が、金利が1.5%上昇して毎月16万円になった時に払い続けられますか?月3万円は年36万円、10年で360万円の追加負担です。これが「選択ミスで数百万円の差」の正体です。
ケーススタディで具体的に見ていきましょう。3人とも3,500万円を借りた設定です。
ケース①:田中さん(43歳・会社員)——2019年に固定1.3%で借入
2019年、フラット35で全期間固定1.31%を選択。当時は「変動の方が0.8%台だから損では?」と周囲に言われた。しかし2026年現在、変動金利は2.9%前後まで上昇。田中さんの月返済額は変わらず10万3千円。今から変動で借りた人との差は月約4万円、年間48万円の節約になっている。35年間の総返済差は概算で800万円以上の有利さがある。
→ 判定:大正解。金利上昇前の固定確定が功を奏した。
ケース②:鈴木さん(38歳・共働き夫婦)——2022年に変動0.575%で借入
2022年、SBI新生銀行の変動金利0.575%を選択。当初の月返済額は8万7千円。ところが日銀が利上げを始めた2024年以降、適用金利は段階的に上昇。2026年現在の適用金利は約2.3%で月返済額は12万1千円に。月3万4千円の増加はダブルインカムだったから何とかなっているが、妻が育休に入る今秋が正直不安だと話す。
→ 判定:状況変化でリスクが顕在化。借り換え検討が急務。
ケース③:佐藤さん(35歳・自営業)——2023年に変動0.8%で借入、収入が不安定
2023年、変動0.8%で3,500万円を借入。自営業のため収入は年によって±200万円の振れ幅がある。2026年時点で適用金利は2.5%前後、月返済額は当初比+2万8千円増加。自営業の場合、収入が落ちた年に金利が上がると二重苦になる。既に固定への借り換えを検討中だが、諸費用(保証料・手数料等)で50〜80万円かかる見通しで決断できずにいる。
→ 判定:自営業×変動は最もリスクが高い組み合わせ。早急に借り換えコストを試算すべき。
この3つのケースに共通しているのは、金利の水準ではなく「自分の収入と生活費の変動幅」が選択の正解を決めているという事実です。
「結局どっちがいいの?」という問いへの答えは、以下の3つの質問に対するあなたの回答で決まります。感情ではなく、条件で判断してください。
基準①:月返済額が今の1.5倍になっても生活できるか?
変動金利で借りるなら、適用金利が今より1.5〜2%上昇した場合の月返済額を事前に計算してください。その金額が家計の許容範囲内であれば変動でも問題ありません。
計算方法は簡単です。SBI証券やSMBC信託の住宅ローンシミュレーターを使い、現在の金利+2%で月返済額を出す。それが手取り収入の35%以下に収まっているなら変動選択可。35%を超えるなら固定一択です。
基準②:返済期間はあと何年残っているか?
残り期間が10年以内なら変動でもリスクは限定的です。金利が多少上昇しても、期間が短ければ総支払差額は小さい。しかし残り20年以上なら、金利変動リスクが積み重なる時間軸が長く、固定の安心感は費用対効果が高くなります。
基準③:収入は会社員か、自営業か?
収入が安定した会社員の場合、変動でも金利上昇に応じて生活費を微調整できます。しかし自営業・フリーランス・契約社員は収入の変動リスクと金利の変動リスクが重なるため、二重のリスクを抱えることになります。この場合は固定を強く推奨します。
| あなたの状況 | 推奨タイプ | 理由 |
|---|---|---|
| 安定収入・返済期間20年超・金利上昇耐性あり | 変動 | 低金利メリットを長期間享受できる |
| 安定収入・返済期間20年超・金利上昇耐性なし | 固定 | 月額確定で家計管理が容易 |
| 自営業・フリーランス・どの期間でも | 固定 | 収入変動×金利変動の二重リスク回避 |
| 会社員・残り返済期間10年以内 | 変動 | 期間短縮でリスク限定的 |
この判断基準に「今後の日銀の金利見通し」は含まれていません。なぜなら、日銀の動きを正確に予測できる人は世界に一人もいないからです。予測できないものに賭けるのではなく、自分のキャッシュフローという「コントロールできる変数」で判断する——これが正しいアプローチです。
すでに変動金利でローンを組んでいる方に向けて、具体的なアクションを説明します。
借り換えが有利になる「3つの条件」
住宅ローンの借り換えは、以下の3条件がそろった時に検討価値が生まれます。
- 金利差が1%以上:現在の適用金利と借り換え先の固定金利の差が1%以上
- 残高が1,000万円以上:残高が低いと諸費用を回収できない
- 残り返済期間が10年以上:期間が短すぎると諸費用負けする
2019年以前に固定1.3%前後で借りた人は借り換えの必要なし。問題は2020〜2023年に変動0.4〜0.9%台で借りて、今の適用金利が2%を超えている人です。
- 現在の借入先の「直近の返済明細書」を確認し、現在適用されている金利を把握する
- SBI証券・楽天証券・モネックスの各住宅ローン比較サービスで固定金利の見積もりを取る(審査なしで試算可能)
- 借り換え手数料(保証料・登記費用・手数料等)の合計を算出する(概算:50〜100万円)
- 「月額差 × 残り返済月数 ー 諸費用」がプラスなら借り換え実行
株価動向と住宅ローンの意外な関係
株価が上昇局面にある今、「株で儲けたから繰り上げ返済しよう」と考える方もいるかもしれません。しかし計算が必要です。住宅ローンの金利が3.5%なら、繰り上げ返済の「運用利回り」は税引き後3.5%の確定リターンです。これはNISAを使った株式投資と単純比較できません。
NISA口座で日本株インデックスに積み立てると、過去の実績では年5〜7%のリターンが期待できます(過去平均であり、将来を保証しません)。住宅ローン金利が3.5%なら、差分は年1.5〜3.5%です。この差が許容できるなら繰り上げ返済よりNISA積み立てが合理的です。
ただし、iDeCoの所得控除効果(税率20%なら年最大5.7万円節税)も考慮すると、繰り上げ返済・NISA・iDeCoの優先順位は個人の収入・税率・ローン金利によって変わります。
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よくある質問
Q1. 日銀がこれ以上利上げしない可能性はありますか?
現在の政策金利は2.5%(2026年2月時点)です。日銀は物価目標2%の「安定的・持続的な達成」を確認しながら利上げを進める方針を示しています。市場コンセンサスでは2026年中に追加利上げが1〜2回行われる可能性が残っています。ただし、世界経済の急減速やスタグフレーション懸念(日経新聞も報道)が強まれば、利上げペースが鈍化する可能性もあります。「利上げが止まる」という確信を持って変動を選ぶのは危険です。
Q2. 固定と変動を組み合わせる「ミックスローン」はどうですか?
ミックスローン(例:半分固定・半分変動)はリスクを分散できる一方、諸費用が2倍かかります。また「中途半端に守る」という発想は、固定のメリット(完全な返済計画確定)も変動のメリット(低金利)も中途半端になります。明確な判断基準で固定か変動かを決められるなら、ミックスの優位性はほとんどありません。管理コストも増えます。
Q3. 借り換えの際、フラット35が良いですか?それとも銀行の固定ですか?
フラット35は住宅金融支援機構が保証する全期間固定で、金利は公示されているため透明性が高いです。一方、メガバンク(三菱UFJ、SMBC、みずほ)や地銀の固定金利は、交渉余地があり審査が通れば優遇金利が適用される場合があります。借り換えコストを含めた総返済額の試算を、楽天証券やSBI証券の無料ローン相談で複数行から取ることを強くお勧めします。
Q4. 住宅ローン減税(控除)は固定・変動で違いがありますか?
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、固定・変動に関係なく適用されます。2024年以降の制度では、借入残高の0.7%を最大13年間税額控除できます。ただし金利が0.7%を超えると「払った金利>控除額」となるため、現在の金利水準(2.5〜3.8%)では控除が目減りすることに注意してください。
① スマートフォンで「住宅ローン返済明細」アプリまたは借入先銀行のアプリを開く
② 現在の適用金利を確認する(通帳かアプリに記載あり)
③ SBI証券または楽天証券の住宅ローン比較ページで、現在の残高・残り期間・金利を入力する
④ 固定金利へ借り換えた場合の月額差と総返済差を計算する
⑤ 差額が諸費用(50〜80万円目安)を上回るなら、相談予約ボタンを押す
金利が上がってから固定に切り替えようとすると、固定金利も上昇しています。
※ 本記事は情報提供を目的としており、投資勧誘ではありません。投資判断はご自身の責任で慎重に行ってください。記載の金利・手数料等は執筆時点のものであり、最新情報は各機関の公式サイトでご確認ください。